渋谷の陸上教室 第一回 

Shibuya Athletics Class

マラソン 野口みずきさん

世界のトップアスリートを間近に

 2025年9月、東京で、1991年以来34年ぶりに世界陸上が開催されます(日本での開催は2007年大阪大会以来18年ぶり)。陸上競技に熱い視線が注がれる今年、渋谷区の小中学校で全4回にわたり、日本代表として世界で活躍したアスリートを招いて「渋谷の陸上教室」を開催しました。

 第一回は、2004年アテネ五輪「女子マラソン金メダリスト」の野口みずきさんです。

 第一回の「渋谷の陸上教室」は、金メダリスト・野口みずきさんの経歴を紹介するビデオ鑑賞から始まりました。世界のトップアスリートとしての活躍を目の当たりに、子どもたちの表情は真剣そのものでした。 

 緊張感のあるなか、直後に登壇した野口さんはとてもにこやか。「ニックネームは“みーぼう“。そう呼んでください」とフレンドリーな姿に、少しとまどった子どもたちもいたようです。またアテネオリンピックで獲得した金メダルを「触っていいよ」と手渡されました。”本物”を手にした子どもたちの目は輝き、徐々に緊張も和らいでいきました。 

 野口さんは中学1年生のときにテレビで世界陸上を観たときの驚きや、自身が世界をめざそうと思ったきっかけ、メダルを獲るための厳しい練習方法など、たくさんの貴重な話をしてくださいました。また、アテネオリンピックでの秘話も。レース中の苦しいときに頭のなかで突然音楽が流れ、それが金メダルにつながる原動力になったとのこと。想像もつかなかったエピソードに子どもたちは興味津々のようす。自然に拍手が起こるなど、コミュニケーションが生まれ、この場でしか得ることのできない貴重な時間を過ごしました。 

走る喜びを体感 

 講義のあとは実際にからだを動かし、“じゃんけんリレー”にも挑戦しました。 

 当初「走ることが好きな人?」という野口さんの問いかけに反応をしたのは数人だけ。けれども「速く走れるようになりたい人は?」と続けると、大勢の子どもたちの手があがりました。そこで野口さんは実際に腕の振り方や姿勢について、ていねいにアドバイスを送ります。子どもたちはすぐさま楽しそうに実践していました。 

 その後に行われたリレーは、バトンの受け渡しの際に次の走者がじゃんけんで勝つ必要があるというもの。これに子どもたちは大盛り上がり。東京2025世界陸上オリジナルのバトンを手に、さきほど教えてもらった速く走る方法に挑み、声援を送り合いました。また敗れたチームには本気の悔しさもあったのでしょうか。一度走り終えたあとに「もう一回走りたい!」という声が沸き、それぞれが作戦会議をする姿も。チームワークを大切にすることも走る喜びにつながっていたようです。 

うれしい給食?! 

 給食の時間は輪になって一緒に食べ、野口さんと子どもたちとが一気に打ち解けることに。

 講義で聞いたアテネオリンピックのエピソードに対して「頭に浮かんだ曲は何ですか?」と深堀りする質問や、「みーぼうさんの好きな動物は?」「うどんとおそばとどっちが好き?」……など、まるで友だち同士のような会話も。足が速くなる練習方法はという質問に対して、「坂道ダッシュ!」と即答してもらうなど、いっそう野口さんと陸上競技が身近に感じられるようになったようです。給食を食べ終えたあとはサインをお願いする行列が続いていました。 

好きなことを一生懸命に

 野口さんの子どもの頃の夢は、画家かヘアメイクアーティストになりたいと思っていたそうです。そこから世界的なトップアスリートへ——。だからこそ「いつ、どこで本当に好きなものと出会えるかはわからない。夢に向かっていまを一生懸命に。基本をていねいに」と、子どもたちにアドバイスを送ります。 

 また、「走った距離は裏切らない」という言葉が座右の銘だという野口さんですが、けがをして裏切られた…と感じたこともあったそう。けれども「好きなことを続けるには、よいことばかりじゃない。イヤも好きもどちらも大切なこと。そう考えて納得のいく陸上人生を送ることができました」と笑顔に。そして「努力することを継続して、みなさんも大きな花を咲かせてくださいね」と力強く応援メッセージを送ってくださいました。 

 よいことも苦しく厳しいことも全部好きだから続けられた。世界で羽ばたいた野口さんの経験からくる言葉は、子どもたちの胸に響くものでした 

 野口さん自身も率直に「鳩森小学校のみなさんは純粋でまっすぐ。走ることに興味をもってもらいうれしかったです」と感想を話していました。一緒に過ごした時間はキラキラと、互いにかけがえのない経験になったようです。 

野口みずきさんに聞く!東京2025世界陸上のみどころ

 さまざまな競技を一度に観られるのが、世界陸上のおもしろさです。ぜひ会場で、たくさんの競技と圧倒的な空気感を楽しんでください。 

 マラソンの注目選手は「小林香菜選手」。何かやってくれそう、面白い走りをする、何かを持っている選手ですので、びっくりするようなレース展開をやってくれるんじゃないかと期待大です。やり投は「北口榛花選手」に注目!競技に対する意欲・姿勢がすばらしい選手です。そして、なんといっても短距離は「サニブラウン選手」。外国勢に引けを取らない力強さにも注目ですよ。

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詳細は特設サイトにて


野口みずきさん プロフィール

1978年7月3日、三重県伊勢市生まれ。厚生中で陸上を始め、三重県の強豪・宇治山田商高に進み、全国高校総体に2年連続で出場。高校3年生のときには全国高校女子駅伝に出場し、エース区間の1区を担った。社会人では、ワコール、グローバリー、シスメックスに在籍。99年に初ハーフに挑戦すると、世界ハーフマラソン選手権で銀メダルを獲得するなど才能が開花し「ハーフの女王」の異名をとる。2001年にはエドモントン世界選手権に10000mで出場。02年3月の名古屋国際女子マラソンで満を持してマラソンに挑み初優勝。03年の大阪国際女子マラソンで優勝し、パリ世界選手権の切符を掴むと、同選手権で銀メダル。04年のアテネ五輪では金メダルに輝いた。05年のベルリンマラソンでは2時間19分12秒の日本記録(アジア記録)を樹立した。その後はたびたびケガに苦しんだが、08年北京五輪、13年モスクワ世界選手権の日本代表に選出された。16年3月の名古屋ウィメンズマラソンをラストランに、現役引退を表明。公益財団法人東京2025世界陸上財団理事(広報・PR担当理事)。